いよいよ始まった花粉症シーズン。鼻をムズムズさせ、苦しそうにお口で息をしているお子さんを見て、「かわいそうに…」と見守るだけで終わっていませんか?
実は、歯科医師の私から見ると、本当に心配なのは鼻水そのものではありません。この時期の「一時的な鼻詰まり」をきっかけに定着してしまう「口呼吸(こうこきゅう)」こそが、お子さんの将来の「顔立ち」「歯並び」「姿勢」を大きく変えてしまう原因になるのです。
この記事では、なぜ今すぐ対策が必要なのか、そして今日からお家で楽しくできる「お口の筋トレ」について詳しく解説します。 大切なお子さんの、一生モノの健やかな心身を守るために。まずは現状を知ることから始めてみましょう。
1. その「鼻詰まり」、ただのかわいそう…で終わらせていませんか?
いよいよ花粉症シーズン真っ只中。 鼻をムズムズさせ、苦しそうに口を開けて息をしているお子さんを見て、「お薬を飲ませなきゃ」と思うお母さんは多いはずです。
でも、歯科医師の私から見ると、本当に心配なのは鼻水そのものではありません。 実は、日本の3〜12歳の子どもの約30.7%(※)が、日常的にお口が開いている「お口ポカン」状態にあるという調査結果があります。 ※出典:⽇本における発達期⼩児の⼝唇閉鎖不全の有病率(2021年)
この時期の「一時的な鼻詰まり」から定着してしまう「口呼吸(こうこきゅう)」こそが、お子さんの将来の「顔立ち」「歯並び」「姿勢」を大きく変えてしまう原因になるのです。
2. なぜ「口」ではなく「鼻」で呼吸しないといけないのか?
鼻は「加湿・除菌・温度調節」の3役をこなす高性能な空気清浄機。一方、口は「ただの管」です。口呼吸が習慣化すると、全身にこれだけの悪影響が及びます。
- 虫歯・歯周病・口臭: 口の中が乾き、唾液の分泌量が減り、自浄作用が十分に働かなくなってしまいます。口内細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが上がります。「モーニングブレス(朝の口臭)」が一日中続く状態に。
- 感染症リスク: ウイルスを含んだ冷たい空気をそのまま取り込むことになり、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。
- 全身への影響: 姿勢が悪くなるだけでなく、将来的な誤嚥(ごえん)のリスクにまでつながります。
- 最大の問題:顎が健やかに成長するプロセスが妨げられてしまうこと。
3. 【図解】舌の位置が「顔の形」をデザインする
実は、歯並びを整える一番の立役者は歯科医ではなく「舌」です。

鼻呼吸の場合(上): 舌が上顎に吸い付いています。これが内側からの圧力となり、上顎を広げ、鼻腔(鼻の通り道)も広く育てます。
口呼吸の場合(下): 舌が下に落ちる「低位舌(ていいぜつ)」に。上顎を広げる力がかからず、頬の力で顎が横から圧迫され、顔が下へ伸びる「アデノイド様顔貌」を招きます。
舌が正しい位置(スポット)にないだけで、あごの成長方向がこれほど変わってしまいます。
☆みなさんは普段ボーっとしてる時、舌の先はどこにありますか?
スポット(上顎の裏)に吸い付いているのが正しい位置です!
なぜ「舌の位置」だけで、歯並びまで変わるの?
お口の中では常に、「内側から押す舌の力」と「外側から締める頬の力」がバランスを取り合っています。
- 理想の形(U字型): 舌が上にあり、内側から顎を広げていれば、歯が並ぶための「スペース」が十分に確保された綺麗なU字型のアーチになります。
- 口呼吸・低位舌の場合(V字型): 舌が下に落ちると、内側からの支えがなくなります。すると外側から頬にギュッと押され続け、顎の形がゆがんで「狭いV字型」になってしまうのです。
「スペース」が足りなくなるとどうなる?
狭いV字型の顎では、全ての歯が並びきれません。その結果、行き場を失った歯が前に飛び出して「出っ歯(上顎前突)」になったり、重なり合ってガタガタの「乱ぐい歯(叢生)」になったりするのです。
また、下に落ちた舌(低位舌)が前歯を押し続けてしまうと、「すきっ歯」や、噛み合わせが逆になる「受け口(反対咬合)」の原因にも。 まさに、舌の位置ひとつでお口の中の「設計図」が書き換わってしまうのです。
私の娘も、実は「お口ポカン」でした
歯科医師として毎日子供たちの口を見ている私ですが、自分の娘がまさにこのタイプだと気づいた時はショックでした。 娘も花粉症や鼻炎があり、いつの間にか口で息をするのが「当たり前」になっていたんです。その結果、顎が十分に育たず、歯が並ぶスペースがなくなっていました。
「プロの私でも、日々の生活の中では見逃しそうになる……。」 だからこそ、今このサインに気づいてほしいのです。
4. 意外な落とし穴!「口呼吸」は「姿勢」も壊す
実は、呼吸と姿勢は切り離せない関係にあります。 鼻が詰まって苦しいとき、お子さんの体は無意識にある「SOSサイン」を出しているのです。
なぜ鼻づまりが猫背を引き起こすのか、そのメカニズムを図で見てみましょう。

いかがでしょうか? 「姿勢を正しなさい!」と注意する前に、まずは「鼻でスムーズに呼吸ができているか」を確認してあげることが、根本的な解決への近道なんです。
🔍 お子さんの「お口ポカン」&「口呼吸」チェック
まずは、普段の生活でこんなサインがないかチェックしてみてください。
□テレビを見ている時、気づくと口が開いている
□ 食べる時に「クチャクチャ」と音がする
□ 以前より猫背になった、または顎を前に突き出している
□朝起きた時、唇がカサカサに乾いている
□いびきをかいたり、寝相がすごく悪かったりする1つでも当てはまったら、それは「お口の筋力不足」や「鼻詰まり」のサインかもしれません。
実はこれ、私の娘にすべて当てはまっていたことなんです。小さい時は『行儀が悪いよ』『姿勢を正しなさい』と注意してばかりでしたが、原因は『鼻呼吸がしにくいこと』にありました。
5. 歯科医ママ直伝!今日からできる「お口の筋トレ」
お口周りの筋肉(口輪筋)や舌は、何歳からでも鍛えられます。まずは、一番効果的で簡単なこのトレーニングから始めてみましょう!
① あいうべ体操(まずはこれだけ!)
声は出さなくてもOK。1日30回を目安に、親子で「変顔対決」を楽しみながらやってみてください。

② ついでにやりたい!「お口の習慣」3選
あいうべ体操に慣れてきたら、日々の生活にこちらも取り入れてみてください。
- 舌回し運動(お口の掃除機): 口を閉じたまま、舌先で歯ぐきの表側をゆっくり一周。左右20回ずつ。これ、意外と疲れるんです!
- 「スポット」の意識: 舌先を上の前歯の少し後ろ(スポット)に置くのが、舌の「正しい定位置」です。気づいた時に親子でチェック!
- 耳鼻科との連携(超重要!): どんなに鍛えても、鼻が詰まっていては口呼吸は治りません。花粉症の時期は、まずはお薬や治療で「鼻の通り道」を確保してあげてくださいね。
6. まとめ:鼻呼吸は、親から子への「一生のプレゼント」
我が家でも、娘の「お口ポカン」と「アデノイド様顔貌」の兆候に気づき、親子二人三脚で矯正とトレーニングをスタートしたところです。
「あごを広げる治療(顎顔面矯正)」の本当の目的は、単に見た目を整えることではありません。
「生涯、鼻でスムーズに呼吸できる、健やかな体を作ってあげること」
これこそが、私たちが子供に贈ってあげられる、最高のプレゼントだと私は信じています。
お口の中の自浄作用を守り、正しい骨格の成長を助けることは、一生の健康の土台になります。「たかが鼻詰まり」を「一生の骨格の問題」にしないために。
花粉症で呼吸が苦しくなりやすいこの時期だからこそ、まずは「お口、閉じてみようか?」*と優しく声をかけ、お子さんのSOSサインに気づいてあげることから始めてみませんか?
(執筆・監修:歯科医師 ソイラテ)
🔗【合わせて読みたい記事】
- 【中学生の矯正レポ#1】遅くない?歯科医ママが娘に「顎顔面矯正」を選んだ3つの理由。急速拡大装置の装着当日までを徹底解説!
- 歯科医ママの後悔と再挑戦。中学生の娘と始めた「顎顔面矯正」の話。
#歯科医ママ #口呼吸 #お口ポカン #歯並び #顎顔面矯正 #アデノイド顔貌 #姿勢改善 #花粉症対策 #あいうべ体操 #低位舌
